2019年3月9日土曜日

マシニスト

罪の意識がない人にも、罰って効果があるのだろうか。

The Machinist


監督:ブラッド・アンダーソン
出演:クリスチャン・ベール
   ジェニファー・ジェイソン・リー
   アイタナ・サンチェス=ギヨン

あらすじ


機械工のトレバーは、1年前から不眠症に悩まされていて、今では、病的にやせ細っている。
そのため、上司には、薬物の使用を疑われるほどであった。
眠れぬ夜の彼の心の拠り所は、娼婦のスティービーとコーヒーショップのウェイトレス、マリア。
そんなある日、一人、工場の駐車場で休憩を取り、ようやく眠りに誘われた時、それを邪魔するように、アイバンという奇妙な男が現れる。
アイバンの出現をキッカケに、周囲で不可解な出来事が連続するようになり、トレバーは、次第に追い込まれていく。
果たして、それらは現実なのか、それとも幻想なのか…

中央:クリスチャン・ベール

感じたこと


この映画は、心と体を別のものと考える二元論とは、反対の立場に立っていると考えられる

主人公のトレバーは、過去の出来事を忘れるために、不眠症となり、極度に体重が減少するという肉体的な代償を払うのだ。

クリスチャン・ベールの完璧な役作りに圧倒され、トレバーの悲劇的な面だけが強調されてしまうが、本当の被害者は、事故死したであろう少年であり、その母親だ。

事故を起こす前のトレバーを想像してみよう。

・眠れない夜に、自宅で読んでいるのは、ドストエフスキーの『白痴』。

・自分の責任で片腕を失った同僚が、自分を陥れようとしているという被害者意識。

・自身を支える、同じく孤独な娼婦スティービーを罵る、自分勝手で傲慢な態度。

・理想のウェイトレスと淡い恋に落ちるという想像。(つまり、少年の母親から、”許し”を得られるという勝手な解釈。)

罪悪感に苦しみ、眠れない夜を過ごしていても、一概に、彼を善良な人だと言うことはできない

しかしながら、多少、自己愛が強くとも、罪悪感を回避するために、反社会的にもなりきれずに不眠症に苦しむ彼を、誰が責めることができるだろうか。

アイバンに促されて自首したトレバーは、留置場で、ようやく深い眠りにつくことができる。

ただ、彼の本当の”償い”は、目覚めた後に始まるのだ。


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2019年3月2日土曜日

ダーティ・グランパ

人生を楽しむとは、どういう意味だろうか。

Dirty Grandpa


監督:ダン・メイザー
出演:ロバート・デ・ニーロ
   ザック・エフロン
   ゾーイ・ドゥイッチ
   オーブリー・プラザ
   ダーモット・マローニー

あらすじ


ジョージア州アトランタ。
将来有望な弁護士のジェイソンは、祖母の葬式で、久しぶりに祖父のディックと再会する。
ディックは、翌日から旅行を計画しているが、運転免許が失効していることから、強引にジェイソンを誘い出す。
一週間後に結婚を控えるジェイソンだが、祖母との思い出の地を旅したいというディックの願いを断ることはできず、渋々、フロリダに向かうことに…
ところが、ディックは、朝からポルノビデオを鑑賞し、酒に葉巻にナンパと、やりたい放題。
生真面目なジェイソンも、ディックに振り回されてバカ騒ぎをし、大学の授業で一緒だったレノーアとの再会を経て、少しずつ気持ちが変化していく。


左:ザック・エフロン 右:ロバート・デ・ニーロ


感じたこと


父親の敷いたレールに乗って優等生の人生を歩む孫に、伝えたいことは一体何なのか

迫りくる死への不安。

長い時間をかけて、息子や孫との間にできてしまった深い溝。

妻の死による性の解放。そして、生きる喜び。

様々な思いが交錯する中、フロリダへの短く、下品で、ハチャメチャな旅が始まる。

特に教訓じみたところはない。

名優ロバート・デ・ニーロから、名台詞が聞けるわけでもない。

ただ、この下品なコメディから、事実として伝わるのは、親の選んだ人生ではなく、自分の人生を歩むべきだということ。

すなわち、親の望む相手と結婚するのではなく、互いに挑戦し合える相手を見つけるということ。

そして、最愛の人が死んでも、自分の人生は続くということ。

この映画で魅力的なのは、ヒロインではなく、ヒロインの友人を演じたオーブリー・プラザ。

ハーフプエルトリカンのコメディエンヌは、とっても色っぽくて、老齢のグランパでさえ、若返らせてしまうのだ

ちなみに、フロリダの銃規制の甘さ、麻薬の常態化、警察の腐敗なんかも面白おかしく描かれているのだが、デフォルメされた分を差し引くと、コメディは、やっぱりコメディとしてしか成立しないんだと、恐ろしく思う。


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2019年2月23日土曜日

ウィンターズ・ボーン

17歳の頃の私は、一体、何をしていたのだろう。


Winter's Bone


監督:デブラ・グラニック
出演:ジェニファー・ローレンス
   ジョン・ホークス
   シェリル・リー
   ギャレット・ディラハント

あらすじ


ミズーリ州南部のオザーク。
精神を病んだ母親と幼い弟妹の4人で暮らすリーは、17歳。
高校にも行かずに、家族を支えている。
ある日、麻薬の密造で逮捕されていた父親が保釈され、その後、失踪していることを保安官に知らされる。
父親は、家と土地を保釈金の担保にしていたため、来週の裁判に現れないと、住む家を失ってしまうのだ。
リーは、家族を守るために父親捜しを始めるが、村の人は、誰も協力しないどころか、何かを隠している。

左:アイザイア・ストーン 中央:ジェニファー・ローレンス 右:アシュリー・トンプソン

感じたこと

ミズーリ州の山間部に暮らすリー・ドリーは、気が強く、逞しい少女だが、閉塞された村社会を出て、生きていく力はない

この物語は、白人貧困層であるヒルビリーの社会を背景に描かれている。

ヒルビリーとは、最近ではカントリーミュージックの一種と訳されるが、元々は、アパラチア山脈周辺に住むレッドネック(首筋が赤く日焼けしている白人)のことだ。

リーが生まれ育った狭く閉ざされた社会は、憲法でも、法律でもなく、ヒルビリーの”掟”によって、守られている。また、同時に”掟”によって、生活が縛られている。

そのため彼女は、警察を頼ることもなく、一週間以内に、父の死を証明しなければならないのだ。

17歳の少女にとっては、なんて過酷な試練だろう。

リーが、この村社会を抜け出す方法。それは、米軍への入隊だけである。

この映画に登場する唯一まともな大人は、米軍の面接官。

「覚悟を決めて、家に残るべきだ。」と言うのだが、今日、食べるものに困っている少女には、何の役にも立たない助言だ。

人間は、自らの意志によって、社会に参加するのが理想と言えるだろう。

ただ、個人に開かれた社会は、極めて限定されている

私たちは、それぞれ違ったスタートラインに立たされるのだ。

ディズニーチャンネルばかり見ている日本の子供たちは、絶対に見てほしい

ニューヨークやロサンゼルスだけが、アメリカではないのだ


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