2019年5月3日金曜日

BIUTIFUL ビューティフル

本当に美しいものが貧困の中にあっても、誰も気付かないだろう。

Biutiful


監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:ハビエル・バルデム
   マリセル・アルバレス
   アナー・ボウチャイブ
   ギレルモ・エストレヤ

あらすじ


スペイン、バルセロナ。
社会の底辺で生きるウスバルは、定職には就かずに、霊媒師として死者の見送りをしたり、不法移民の就労を斡旋したりするなどして、日銭を稼いでいた
ウスバルには、2人の子供がいるが、元妻のマランブラは、躁鬱病を患っており、母親としての責任を果たせる状況ではなかった
ある日、血尿が出て病院に行くと、癌に侵され、余命2ヶ月であることを知らされる。
突然の不幸に戸惑い、迫りくる死の恐怖と戦いながら、この世界における自らの責任を果たそうと、ウスバルは模索する。

左:ハビエル・バルデム 右:アナー・ボウチャイブ

感じたこと


私は、『私』しかいないことを知っている

つまり、私が死ねば、『私の世界』が終わることを知っているのだ。

ただ私は、他の人も、それぞれ『私』であることを知っている。

だから、死を考える時、焦り、不安になってしまうのだろう。

特に、自分の愛する人にとっての私の死を、意識せずにはいられない。 

私は、愛する人に、何を残すことができるのだろうかと

ウスバルという人間、また、その置かれている状況は、とても複雑で、一言で言い表すことはできない

妻と別れ、2人の子供を育てているが、元妻のマランブラが、躁鬱病(なおかつ、アル中でセックス依存症)のため、見捨てることができずに、彼女のためにならないと分かりつつも、金を渡してしまう。

愛してはいるが、救うことはできないのだ。

また、裏社会の非合法な仕事に手を染めながらも、セネガル人や中国人の移民者へできる限り支援しようとして、失敗してしまう

彼は、世の中に溢れる矛盾と必死に対峙するのだが、何ひとつ上手くいかないのだ。

霊媒師でもあるため、死者の言葉を聴くことはできるのだが、自分や子供たちの未来を見通すことはできない。

映画のタイトルにもなっている綴り違いの「BIUTIFUL」。

美しさとは、一体なんだろう?

家族4人で食事をしながら、マランブラは、ウスバルとの出会いを子供たちに話して聞かせる

目を輝かせながら、聞き入る娘のアナ。そして、若く輝いていたころのウスバルとマランブラの想い出。

結果的に、4人で過ごすことができた最期の幸せな一時。決して戻ることの許されない美しい瞬間。

「BEAUTIFUL」のスペルを間違えてしまうのは、貧困だけのせいではないけれど、子供たちが、この貧困から抜け出すことなんて、あり得ない。

だからこそ、子供たちのその笑顔が、より一層、美しく輝いてしまうのだろう。

子供たちの世話を頼まれたセネガル人のイへは、戻ってはこない。

ウスバルが聞いたのは、多分、薬による幻聴だろう…

死を迎える時、雪深い森の中で、若くして死んだ父親と対峙したウスバルの表情は、とても穏やかで優しさに満ち溢れている。

そして私たち視聴者は、死後の世界の存在を感じつつ、少しだけ気持ちを落ち着かせることができるのだ。

霊媒師のベアが言ったセリフ。「天地万物が、彼らを育む。」

それだけが、せめてもの救いだ。


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