本当に美しいものが貧困の中にあっても、誰も気付かないだろう。
Biutiful
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:ハビエル・バルデム
マリセル・アルバレス
アナー・ボウチャイブ
ギレルモ・エストレヤ
あらすじ
感じたこと
私は、『私』しかいないことを知っている。
つまり、私が死ねば、『私の世界』が終わることを知っているのだ。
ただ私は、他の人も、それぞれ『私』であることを知っている。
だから、死を考える時、焦り、不安になってしまうのだろう。
特に、自分の愛する人にとっての私の死を、意識せずにはいられない。
私は、愛する人に、何を残すことができるのだろうかと。
ウスバルという人間、また、その置かれている状況は、とても複雑で、一言で言い表すことはできない。
妻と別れ、2人の子供を育てているが、元妻のマランブラが、躁鬱病(なおかつ、アル中でセックス依存症)のため、見捨てることができずに、彼女のためにならないと分かりつつも、金を渡してしまう。
愛してはいるが、救うことはできないのだ。
また、裏社会の非合法な仕事に手を染めながらも、セネガル人や中国人の移民者へできる限り支援しようとして、失敗してしまう。
彼は、世の中に溢れる矛盾と必死に対峙するのだが、何ひとつ上手くいかないのだ。
霊媒師でもあるため、死者の言葉を聴くことはできるのだが、自分や子供たちの未来を見通すことはできない。
映画のタイトルにもなっている綴り違いの「BIUTIFUL」。
美しさとは、一体なんだろう?
家族4人で食事をしながら、マランブラは、ウスバルとの出会いを子供たちに話して聞かせる。
目を輝かせながら、聞き入る娘のアナ。そして、若く輝いていたころのウスバルとマランブラの想い出。
結果的に、4人で過ごすことができた最期の幸せな一時。決して戻ることの許されない美しい瞬間。
「BEAUTIFUL」のスペルを間違えてしまうのは、貧困だけのせいではないけれど、子供たちが、この貧困から抜け出すことなんて、あり得ない。
だからこそ、子供たちのその笑顔が、より一層、美しく輝いてしまうのだろう。
子供たちの世話を頼まれたセネガル人のイへは、戻ってはこない。
ウスバルが聞いたのは、多分、薬による幻聴だろう…
死を迎える時、雪深い森の中で、若くして死んだ父親と対峙したウスバルの表情は、とても穏やかで優しさに満ち溢れている。
そして私たち視聴者は、死後の世界の存在を感じつつ、少しだけ気持ちを落ち着かせることができるのだ。
霊媒師のベアが言ったセリフ。「天地万物が、彼らを育む。」
それだけが、せめてもの救いだ。


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