2019年5月19日日曜日

ブロークバック・マウンテン

風景が美し過ぎると、後悔も増幅されてしまうのだろうか。

Brokeback Mountain


監督:アン・リー
出演:ヒース・レジャー
   ジェイク・ギレンホール
   アン・ハサウェイ
   ミシェル・ウィリアムズ

あらすじ


1963年、ワイオミング。
夏の間だけ、牧場の羊飼いとして雇われた2人のカウボーイ
無口なイニスと陽気なジャック
お互いの能力を認め合いながら、次第に強い絆で結ばれていく。
それは、男同士の友情を越えた深い愛情であった。
夏が終わり、2人は、それぞれの生活に戻っていく。
イニスは、予定通りアルマと結婚し、ジャックは、テキサスのロデオ大会で知り合った、社長令嬢のラリーンと結婚する。
そして、4年の歳月が過ぎ、2人は再会を果たすのだが…

左:ヒース・レジャー 右:ジェイク・ギレンホール


感じたこと


最近は、LGBTという言葉を、よく聞くようになった

レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー。

映画の世界では、これまで、場の雰囲気を和ませる(お笑い?)要素の1つとして、脇役となることが多かったLGBTも、最近では、主題として扱われることが多い。

某広告代理店の調査によると、日本人の約8%。つまり、計算上13人に1人がLGBTだと考えられる。

詳しいことは判っていないが、母胎内で浴びるホルモンに原因があるらしい。 

ある条件が整った時に、必ずLGBTが生まれるのであれば、人間の進化についても解明できるかもしれないし、宗教的に考えれば、そこに、何らかのメッセージが隠されているはずだ

この映画は、時代的に今よりも受け入れられない。まして、カウボーイという閉鎖的な男社会では、決して許されない同性愛をテーマにしている。

実際、見つかれば、拷問の末に殺害されることもあったようだ

多くは語られないのだが、ジャックの死は、事故ではなく、事件であったのだろう。

社会生活を営む上で、共通する道徳観

ブロークバック・マウンテンを下りて、平然とジャックを見送った後、倉庫の隅で嗚咽するイニスの姿に、全てが凝縮されている気がする。

対象は異なるが、誰もが経験したことのある満たされない想いと、決して戻らないブロークバック・マウンテンの夏の日の想い出。

その後に残った『後悔』を描いた作品として考えれば、不思議と共感しかないのだ。


  にほんブログ村 映画ブログ おすすめ映画へ
にほんブログ村

2019年5月3日金曜日

BIUTIFUL ビューティフル

本当に美しいものが貧困の中にあっても、誰も気付かないだろう。

Biutiful


監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:ハビエル・バルデム
   マリセル・アルバレス
   アナー・ボウチャイブ
   ギレルモ・エストレヤ

あらすじ


スペイン、バルセロナ。
社会の底辺で生きるウスバルは、定職には就かずに、霊媒師として死者の見送りをしたり、不法移民の就労を斡旋したりするなどして、日銭を稼いでいた
ウスバルには、2人の子供がいるが、元妻のマランブラは、躁鬱病を患っており、母親としての責任を果たせる状況ではなかった
ある日、血尿が出て病院に行くと、癌に侵され、余命2ヶ月であることを知らされる。
突然の不幸に戸惑い、迫りくる死の恐怖と戦いながら、この世界における自らの責任を果たそうと、ウスバルは模索する。

左:ハビエル・バルデム 右:アナー・ボウチャイブ

感じたこと


私は、『私』しかいないことを知っている

つまり、私が死ねば、『私の世界』が終わることを知っているのだ。

ただ私は、他の人も、それぞれ『私』であることを知っている。

だから、死を考える時、焦り、不安になってしまうのだろう。

特に、自分の愛する人にとっての私の死を、意識せずにはいられない。 

私は、愛する人に、何を残すことができるのだろうかと

ウスバルという人間、また、その置かれている状況は、とても複雑で、一言で言い表すことはできない

妻と別れ、2人の子供を育てているが、元妻のマランブラが、躁鬱病(なおかつ、アル中でセックス依存症)のため、見捨てることができずに、彼女のためにならないと分かりつつも、金を渡してしまう。

愛してはいるが、救うことはできないのだ。

また、裏社会の非合法な仕事に手を染めながらも、セネガル人や中国人の移民者へできる限り支援しようとして、失敗してしまう

彼は、世の中に溢れる矛盾と必死に対峙するのだが、何ひとつ上手くいかないのだ。

霊媒師でもあるため、死者の言葉を聴くことはできるのだが、自分や子供たちの未来を見通すことはできない。

映画のタイトルにもなっている綴り違いの「BIUTIFUL」。

美しさとは、一体なんだろう?

家族4人で食事をしながら、マランブラは、ウスバルとの出会いを子供たちに話して聞かせる

目を輝かせながら、聞き入る娘のアナ。そして、若く輝いていたころのウスバルとマランブラの想い出。

結果的に、4人で過ごすことができた最期の幸せな一時。決して戻ることの許されない美しい瞬間。

「BEAUTIFUL」のスペルを間違えてしまうのは、貧困だけのせいではないけれど、子供たちが、この貧困から抜け出すことなんて、あり得ない。

だからこそ、子供たちのその笑顔が、より一層、美しく輝いてしまうのだろう。

子供たちの世話を頼まれたセネガル人のイへは、戻ってはこない。

ウスバルが聞いたのは、多分、薬による幻聴だろう…

死を迎える時、雪深い森の中で、若くして死んだ父親と対峙したウスバルの表情は、とても穏やかで優しさに満ち溢れている。

そして私たち視聴者は、死後の世界の存在を感じつつ、少しだけ気持ちを落ち着かせることができるのだ。

霊媒師のベアが言ったセリフ。「天地万物が、彼らを育む。」

それだけが、せめてもの救いだ。


  にほんブログ村 映画ブログ おすすめ映画へ
にほんブログ村

あしたは最高のはじまり

この先に「最高」はあるのだろうか。 Demain Tout Commence ...