大人になるとは、死を認識することだろうか。
Slow West
監督:ジョン・マクリーン
出演:コディ・スミット=マクフィー
マイケル・ファスベンダー
ベン・メンデルソーン
カレン・ピストリアス
あらすじ
19世紀後半。スコットランド貴族の少年ジェイは、年上の小作人の娘ローズに恋をしていた。
すると、身分違いの恋に反対した大人同士が争いとなり、ジェイの叔父が死んでしまう。
お尋ね者となったローズとその父親は、アメリカに逃亡するのだが、諦めきれないジェイは、ローズを追って、一人、旅に出る。
道中、北軍の軍服を着た強盗に出くわしたジェイは、偶然、賞金稼ぎのサイラスに助けられる。
サイラスは、頼りないこの少年が、荒野を一人で生き抜くのは不可能だと思い、用心棒になることを提案する。
感じたこと
子供の頃、父親が見ていたマカロニ・ウェスタンとは、ちょっと違う。
西部劇というよりは、ファンタジー。舞台は、荒涼たる原野ではなく、どちらかというと、緑豊かな大自然であり、主人公も、ガイドブックを片手に恋人を探す少年である。
ある意味、世間知らずの貴族の少年が、アメリカ西部で生き残り、心良い賞金稼ぎと出会えただけで、奇跡だ。
少年ジェイと一匹狼の賞金稼ぎであるサイラスは、一緒に旅をする中で、心を通わせていく。
しかし、普通でないのは、変わるのがジェイではなく、サイラスだということ。
そもそも、この物語は、サイラスの回想である。少年が大人に成長するというよりは、賞金稼ぎの改心のキッカケが描かれていると言えなくもない。
ローズとその父親の家が、別の賞金稼ぎに襲われた時、ジェイは、現実的な方法を何も考えずに、ローズの元へ走る。
死を全く恐れていないが、死を回避する術も、ローズを守る術も、何もない。ジェイは、スコットランドにいた頃の少年のまま、そこに現れてしまったのだ。
皮肉にも、ジェイは、ローズの銃弾によって死を迎える。
ローズからジェイへの言葉は、愛する男への最後の言葉ではない。死の数秒前に、ジェイは、ようやく大人になれたかもしれない。
彼女には、生き延びる強い意志があった。その美しさ、その強さに、サイラスは、これからの人生を捧げるのだろう。
最後に、フラッシュバックで描かれる遺体の映像。たくさんの死(=犠牲)の上に、今の生活があるということだろうか。
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